2014年6月1日 第185話             


玉泉延壽仙人掌


             「玉泉壽を延ぶ仙人掌」とは、
             仙人掌という杯盤で雲上の玉泉から 
             湧き出る甘露を受け、この甘露で玉の粉末を練り、
             これを服用すれば、不老長寿が得られるという


      

世界一の長寿国

 世界保健機構(WHO)は2014年度版の世界保健統計を発表しました。今年の長寿国は、日本の女性が87歳で昨年に続き世界一でした。日本の男性は80歳で、世界で8番目です。男女合わせた日本の平均寿命は84歳で、昨年に続き首位を維持したということです。

 男性の首位がアイスランドで81.2歳ですから、日本の男性も長寿です。平均寿命の調査対象は194ヶ国ですが、世界の平均寿命は70歳で、女性が73歳、男性は68歳ということでした。日本では65歳以上の高齢者人口が3000万人を超えて、4人に一人が高齢者です。

 日本の高齢化スピードは先進国の中で最も早く、日本は超高齢社会になりました。昭和22年~24年生まれの団塊世代が65歳以上の高齢者になったのですが、だれも自分が高齢者であると思っていないようです。 不老長寿への願はますます高まっています。

 けれども65歳を過ぎると、高血圧の薬を飲んでいる人も多くなり、筋肉が衰えて、つまずいたり転んだり、喉をつまらせたり咳き込んだりします。また記憶力や思考能力が低下したと感じることがあります。それで自分は健康で長生きできるだろうか、などと、ふと思うのです。

健全な老化が人々の願いです

  身体が不自由であったり、認知症であれば、他の人の助けがなければ日常の生活ができません。だから健康で長生き、すなはち健全な老化が人々の願いです。

 身体が健康でなければ心も健康でない、精神的に深刻な苦悩が続くと肉体的にも病んできます。心身一如ですから、身体も心も健康であり、活き活きとして、生き甲斐を感じて日々生活ができる状態が持続できれば、健全な老化が期待できるでしょう。

 どうすれば、心身の健康が保てるのか、生き甲斐を感じて生きていけるのでしょうか。健康で長生きできる生き方として、これまで言われてきたのは、病気につながる数値を適正にしていくために、生活習慣を改善することでした。ところが最近では生活習慣の改善に加えて、社会参加をすることが健康で長生きにつながると言われるようになりました。

 健康で長生きのコツとして、積極的な社会参加が長生きとどうかかわっているのかということについて、海外の研究者がさまざまなことを指摘しています。たとえば、外出して交流を深めることや外出して食事する、家事仕事などの活動的な仕事をすることは、スポーツジムなどでの運動よりも長生きに役立っているということも、その一つです。

長生きの10ケ条

 高齢者医療の専門家として知られている林 泰史さんは、「年老いても健常老化であること」の大切さを説いておられる。それで高齢者3千人を長期間調査して「元気で長生きの10ケ条」をまとめられました。

1,血中アルブミン値が高いこと
  血中アルブミン値が高いことが若々しい心身を保つ

2,総コレステロール値が高すぎず低すぎないこと
  血清総コレステロール値は、低すぎるとよくない

3,足が丈夫であること
  運動不足は糖尿病や心臓病などの原因ともなる

4,自分は健康であると思っていること
  自分で健康だと思う人は気持ちが高揚し長生きする

5,すこし前のことをよく覚えていること
  軽度認知症は早めに治療する、計画的なことを考えて記憶力を保つ

6,体重は太らず、痩せすぎないこと
  中ぐらいに保つ、過食せず偏食をやめる

7,禁煙をすること
  タバコは肺がんや心筋梗塞のもと

8,お酒をほどほどにたしなむこと
  お酒は一日一合程度が適量

9,血圧は高すぎず低すぎないこと
  血圧は130/85mmHg未満が正常値

10,外出して会話を活発にすること
  外での活動や外食、家事仕事、社会参加を活発にする

 この10ケ条のほとんどは自分の努力で達成できることばかりです。
 「元気で長生きの10ケ条」を実践することで、健全な老化が保たれて、活き活きとして生きていくことができると、秦 泰史さんは「元気で長生きの10ケ条」をすすめておられます。

健常老化

 生老病死を苦しみととらえれば、なにごとも苦しみばかりと受けとるようになり、死はすべての終わりだと思ってしまいます。けれども、生老病死は自然なことであり、それを喜びととらえれば、何ごとにつけてもプラス思考がはたらき、感性も豊かになり、向上心を鼓舞するから、死とは成熟の完成であるとして、活き活きと生き甲斐を感じて日々を生きて行こうと思うようになります。

 そして死を成熟の完成だとすれば、人格の向上につとめるでしょう。そのためには生活習慣の改善に加えて、社会参加をすることで健常老化をめざそうとします。生まれてきたことを喜び、過ぎ去ったことにとらわれないで、されど未来はわからないから、今をよりよく生きようとします。

 「玉仙延壽仙人掌」とは、雲上の清い泉から湧き出る甘露を仙人掌の杯盤で受けて、この甘露で玉の粉末を練り、これを服用すれば、不老長寿が得られるという。「元気で長生きの10ケ条」を実践して健常老化をめざすことが「玉仙延壽仙人掌」ということでしょう。

 朝に目覚めて、今、生きていることの素晴らしきことを感じ、夕べに眠りにつくときに、今日は楽しい一日であったと思えたらよいのです。命尽きるまでよき人生であったと、常にそういう思いで日々が過ごせたら、それが健常老化ということでしょう。そして世の中に自分が必要とされる生き方ができれば、より幸せな人生になるでしょう。

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