2014年2月1日 第181話             

今とは、一呼吸の間

 
 
 光陰は矢よりも速やかなり、身命は露よりも脆し [修証義]


光陰は矢よりも速やかなり

 今年は平成26年、昭和から平成になってもう26年目で、月日の過ぎ去るのが速いと感じます。昔から、一月・往ぬ、二月・逃げる、三月・去る、などと時が過ぎゆくことの速きことを言い表してきました。

 新幹線のぞみ号は時速300キロのスピードですから、秒速では83㍍とものすごく速い。ところが地球の周りは4万キロ㍍で一日一回転しますから、地球の回転速度は時速1700キロ㍍です。これを秒速にすると473㍍で、地球の回転速度すなはち時の過ぎゆく速さは、新幹線のぞみ号よりはるかに速いのです。

 多忙な時や、何かに夢中に取り組んでいる時は、時の過ぎゆくのを忘れています。催事の準備や期限付きの仕事に取り組んでいたり、試験日などが予定されている時は、刻一刻とせまり来る時の流れにのみ込まれそうになります。

 月の変わり目や一日が暮れようとする夕刻になると、月日の経つのが速いと感じることがあります。また年齢を重ねるほどに、月日の去りゆくのが速いと感じる人が多くなるようです。過ぎ去った日々のことを思うからでしょう。いずれにしても、時の流れが速いから、人生はあっという間に終わってしまいそうです。

身命は露よりも脆し

 「光陰は矢よりも速やかなり、身命は露よりも脆し」と修証義にあります。「光陰は矢よりも速やかなり」で、時の過ぎゆくのがことのほか速い、そして「身命は露よりも脆し」で、いつ命が尽きてしまうかわからない。まだまだ先があるなどと悠長にかまえていると、突然に死がおとずれてくるかもしれません。

 病におかされて急速に衰弱して死んでしまったり、突然死もあります。事故や災害に遭遇することもあるから、常に人生の終焉を想定した生き方も心得ておくべきかもしれません。
 ところがそれは全く予測しがたいから、終焉の時がきたらその時に素直に受け入れればよろしい、というのも生き方でしょう。いずれにしても、心準備を怠ることなきようにということでしょう。

 だれもが幸せな人生でありたいと願うはずです。では、何が幸せであるのかと問われれば、どう答えるでしょうか。多くの人が「健康で長生できれば幸せです」と答えるでしょう。でも、健康で長生するためには、それを可能にする条件が整っていなければなりません。はたしてその条件とは何でしょうか。

 お釈迦様は「悩みもなければ苦しみもないことが、幸せである」といわれました。心と身体は一つのものですから、心が病むと身体も病む。だから、悩みや苦しみがあると、健康で長生できないのです。でも悩みもなく、苦しみもなく生きることは不可能に思われます。なぜならば、生きている限りは四苦八苦の苦しみがあり、欲望は尽きないので煩悩の焔を消し去ることができないからです。

確かに生きているのは一呼吸の間

 神応寺では1998年にホームページを開設してより、「心の悩み、人生相談」を受けています。すでに15年を経ることになりました。多くの方が昼となく夜となく、悩みをお寄せになります。メールであったり、電話で語られたり、ご本人が来られたりです。

 様々な悩みごとを聞かせていただきますが、悩みの背景に共通することがらがあるようです。その一つが「過去にこだわっていること」、そしてもう一つが「ストレスを解消できないこと」です。だから悩みもなければ苦しみもない生き方とは、「過去にこだわらない」と、「ストレスを解消する」ということかもしれません。

 人の身体は50~60兆個の細胞よりなり、一呼吸の間に1000個の新しい細胞が生まれて、1000個の古い細胞が死んでいくそうです。一呼吸前の私と一呼吸後の私とは異なる新しい私ですから、過去の私は存在しないのです。だから、変わらないという思い込みが「過去にこだわって」悩みの原因になっているようです。
 そして、確かに生きているのは一呼吸の間です。だから、「今」という時に生きているから「ストレスを解消する」のも「今」でしょう。

 「過去にこだわらない」そして、「ストレスを解消する」ということを、生活習慣として身につけることで、生き方上手になれます。
 「過去にこだわらない」ために、毎朝一番に、背筋伸ばして肩の力を抜き、ゆっくりと息を数回吐き、『今日は良いことがある、悪いことは起こらない、過去は考えない』と自分に言い聞かせます。そして洗面して自分の笑顔を鏡に映して今日一日の顔とします。
 「ストレスを解消する」ために、常に生き方の心得を実践します。
⦅こだわらない⦆ 姿勢正しく肩肘張らず、ゆっくりと息を吐く呼吸法
⦅とらわれない⦆ 少欲知足、欲張らない
⦅ こころゆったり⦆ 快眠・快食・快便で心身健やかに生きる。

菩薩の行

 今年は仏歴すなはちお釈迦様ご生誕2580年です。お釈迦様は80歳のご長寿でしたから、今年はお釈迦様が亡くなられてより2500年です。そして2月15日がご命日です。

 お釈迦様が生きとし生けるものみな仏なりと説かれましたが、煩悩の塊で自己中心のわがままな人間がどうして仏なのか、なかなか納得できません。たしかに生きているうちは欲があるから成仏できませんが、死んだら欲も消えてしまうから成仏する。だから心配しなくてもよいのでしょう。

 「我は仏にならずとも 生きとし生けるものみなをもらさず救いたすけんと、誓う心ぞ仏なる」 人びとを救う活動をすること、すなはち他の幸せを願い生きることが菩薩の行であり、人間の理想的な生き方である、とお釈迦様は説かれました。
 広辞苑には「人間」とは世の中という意味がまず最初に記されていますから、世の中に必要とされる生き方をする、それが他の幸せを願う生き方になるのでしょう。

 「過去にこだわらない」、「ストレスを解消する」ということを生活習慣として身につけることによって、生き方上手になれます。そして世の中で必要とされる生き方ができます。自分にできることで菩薩の行が実践できれば、人は幸せになれるはずです。
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